熱力学 · ThermoLab

夕暮れのスタジオにある熱力学ワークステーション。ガラスのシリンダーの中を分子が飛び回る様子が見え、コンソールのつまみで加熱したりピストンを押し引きしたりすると、2つの画面に p–V グラフと速さの分布がリアルタイムで描かれます。分子の熱運動、圧力のミクロな説明、3つの気体の法則から、圧縮発火器、熱力学第一法則、断面で見る4ストロークガソリンエンジン、カルノーサイクル、第二法則の「逆再生」まで12のテーマ。

教科:物理 · 対象:中学校、高校 · 学習内容:分子の熱運動、気体の法則、熱力学第一法則、熱機関と効率

章の内容

熱力学ワークステーション

台の上にはガラスのシリンダーがあり、一定質量の気体が封じ込められています。中の小さな球は拡大して描いた気体分子で、色が暖かいほど速く動いています。

真ちゅうのピストンは上下に動きます。上のハンドルは送りねじでピストンを押し引きし、ハーフナットを外すとピストンは自由に浮きます。シリンダーの下のホットプレートは加熱も冷却もでき、右の圧力計と左の温度計が常に値を示します。

コンソールの斜面にある2つの画面がリアルタイムでグラフを描き、両側のレバーはマウスで直接押し引きできます。下の「次へ」を押して、各部を順に見ていきましょう。

分子の熱運動と温度

気体分子は絶え間なく不規則な運動をしていて、互いに衝突し、器壁にぶつかっています。分子の速さはそれぞれ異なり、衝突のたびに変わります。

左の画面は今この瞬間の速さの分布です。中ほどが多く、両端は少なくなっています。白い線はマクスウェル分布の曲線です。左のレバーを前に押して加熱すると、分子はどんどん速くなって色が暖かくなり、分布曲線は低く広がり、ピークが右へ移ります。

温度は分子の平均運動エネルギーの目安です。温度が高いほど熱運動は激しくなります。いまピストンはロックされているので、変わるのは温度だけです。

気体の圧力はどこから来るのか

ピストンの下面に近づいてみましょう。小さな光の一つひとつが、分子がピストンにぶつかって跳ね返った瞬間です。1個の分子の衝突はとぎれとぎれですが、膨大な数の分子が頻繁に、絶え間なくぶつかることで、ピストンには一様で持続的な力がはたらきます。これが気体の圧力です。

左の画面は1秒あたりの衝突回数と、力積から求めた圧力を表示します。試してみましょう:

· 分子数を2倍(体積は同じで数密度が2倍):衝突回数も圧力も2倍になります。

· 温度を上げる:分子が速くなり、強く、頻繁にぶつかるので、圧力も大きくなります。

気体の圧力の大きさは分子の数密度と分子の平均運動エネルギーで決まります。

ボイルの法則

シリンダーの外側を恒温水槽で囲んだので、気体の温度は一定に保たれます。右のレバー(ハンドルを動かします)でピストンをゆっくり押し引きし、圧力計と左の画面を見てください。

体積が半分になると圧力は2倍、体積が2倍になると圧力は半分になります。一定質量の気体では、温度が一定のとき、圧力は体積に反比例します:

pV = C または p₁V₁ = p₂V₂

p–V グラフでは双曲線(等温線)になり、p–1/V でグラフにすると原点を通る直線になります(右の画面)。水温を変えると別の等温線が得られ、温度が高いほど等温線は原点から遠くなります。

ハンドルを速く回しすぎると、気体が水と熱をやりとりする時間がなく、温度が一時的に上がって点が等温線からずれます。

シャルルの法則

ハーフナットを外すとピストンは自由に浮きます。気体の圧力は常に大気圧とピストンの重さによる圧力の和に等しく、一定に保たれます。

加熱すると気体が膨張してピストンを押し上げ、冷やすとピストンは下がります。一定質量の気体では、圧力が一定のとき、体積は絶対温度に比例します:

V / T = C または V₁/T₁ = V₂/T₂

左の画面の V–T グラフは直線で、低温側へ延長すると 0 K(−273.15 °C)で交わります。これが絶対温度の目盛りのゼロ点の由来です。

定積変化の法則

ピストンをロック(赤いクランプ)すると、気体の体積は一定になります。加熱すると、温度計と圧力計の針が一緒に上がっていきます。

一定質量の気体では、体積が一定のとき、圧力は絶対温度に比例します:

p / T = C または p₁/T₁ = p₂/T₂

左の画面の p–T グラフも、延長すると 0 K を通る直線です。ミクロに見ると、体積が一定なので分子の数密度は変わらず、温度が上がると平均運動エネルギーが大きくなって器壁に強くぶつかるため、圧力が大きくなります。

夏にタイヤに空気を入れすぎてはいけない理由や、日なたに置いた密閉缶が破裂しやすい理由もこれです。

仕事と内部エネルギー

圧縮発火器:厚いガラス筒の底に少量の綿火薬(ニトロセルロース)を入れ、ピストンをすばやく押し下げると、綿が燃え上がります。ピストンが筒内の空気に仕事をし、空気は熱を外へ逃がす暇がないので、内部エネルギーが増えて温度が急上昇し、綿火薬の発火点を超えるのです。

ゆっくり押し下げると、同じだけ圧縮しても熱が少しずつ逃げてしまい、温度はあまり上がらず、綿は燃えません。

栓が飛ぶ実験:瓶に空気を送り込みます。栓が飛んだ瞬間、瓶内の気体は膨張して外へ仕事をし、内部エネルギーが減って温度が下がり、水蒸気が凝結して小さな水滴になります。瓶の中が白く曇るのはこのためです。

仕事と熱の移動は、どちらも物体の内部エネルギーを変えることができます。外から仕事をされると内部エネルギーは増え、外へ仕事をすると減ります。

熱力学第一法則

熱力学的な系の内部エネルギーの増加 ΔU は、外部から与えられた熱量 Q と、外部からされた仕事 W の和に等しくなります:

ΔU = Q + W

右の画面の3本のバーは「ゼロに戻す」を押した時点から積算されます。符号の約束:吸熱なら Q は正、放熱なら負。外部が気体に仕事をすれば W は正、気体が外部に仕事をすれば負。理想気体の内部エネルギーは温度だけで決まります。

· 断熱(断熱ジャケット):Q = 0。圧縮すると W > 0 で内部エネルギーが増え温度が上がり、膨張すると温度が下がります。

· 等温(水槽):ΔU = 0。外部がした仕事と同じだけの熱を気体が水へ放出します。

· 定圧:吸収した熱の一部は内部エネルギーの増加に、残りは外部への仕事に使われます。

· 定積:W = 0 で、吸収した熱はすべて内部エネルギーになります。

4ストロークガソリンエンジン

これは断面を見せた単気筒4ストロークガソリンエンジンです。クランク軸が2回転し、ピストンが2往復して1サイクルが完了します:

① 吸気:吸気弁が開き、ピストンが下がってガソリンと空気の混合気を吸い込みます。② 圧縮:両方の弁が閉じ、ピストンが上がって混合気を圧縮します。力学的エネルギーが内部エネルギーに変わります。③ 膨張(燃焼):点火プラグで着火し、燃焼ガスが激しく膨張してピストンを押し下げます。内部エネルギーが力学的エネルギーに変わります。外へ仕事をするのはこの行程だけです。④ 排気:排気弁が開き、ピストンが上がって燃焼ガスを押し出します。

ほかの3つの行程ははずみ車の慣性で進みます。左の画面は対応する理想サイクル(オットーサイクル)で、囲まれた面積が1サイクルの正味の仕事です。圧縮比を上げると効率 η = 1 − 1/rγ−1 が高くなります。

レーシング V8 に切り替えると、4気筒ずつ2列の気筒が 1-8-4-3-6-5-7-2 の順に点火します。クランク軸が 90° 回るごとに1つの気筒が燃焼し、どの瞬間も2つの気筒がクランク軸を押しています。右の画面は2つのエンジンのトルクの比較です。単気筒は1サイクルの中で大きく上下し、ほとんどの時間をはずみ車に頼っていますが、V8 のトルクはほぼ平らな線になります。これが多気筒エンジンがなめらかに回る理由です。

熱機関の効率とカルノーサイクル

熱機関は高温熱源から熱 Q₁ を受け取り、その一部を仕事 W に変え、残りの Q₂ を低温熱源へ放出します。効率は η = W / Q₁ です。

シリンダーの下のスライド台が順に入れ替わります:銅(高温熱源)→ 白い磁器(断熱)→ 青いアルミ(低温熱源)→ 磁器。気体は4つの過程を経ます:等温膨張(高温熱源から吸熱)→ 断熱膨張(T₂ まで温度が下がる)→ 等温圧縮(低温熱源へ放熱)→ 断熱圧縮(T₁ に戻る)。

これがカルノーサイクルで、その効率は2つの熱源の温度だけで決まります:

η = 1 − T₂ / T₁

この2つの温度の間で動くどんな熱機関も、この効率を超えることはできません。T₂ > 0 である限り、効率は必ず 100% 未満です。

熱力学第二法則

仕切りを抜くと、左側の気体はすぐに箱全体に広がります。その逆、つまりすべての分子がひとりでに左へ戻る様子を見た人はいません。「逆再生」を押すと、その「ありえない」過程を見ることができます。

理由は確率です。1個の分子が左側にいる確率は 1/2 なので、N 個の分子が同時に全部左にいる確率は (1/2)N です。4個ならたまに起こりますが、200個では宇宙の年齢をかけても待ちきれないほど小さな確率です。

高温と低温の銅ブロックを接触させると、熱は高温側から低温側へ流れ、やがて同じ温度になります。冷たい方がさらに冷たく、熱い方がさらに熱くなることは決して自然には起こりません。

熱力学第二法則:熱は低温の物体から高温の物体へ自然に移ることはない(クラウジウスの原理)。1つの熱源から熱を受け取り、それをすべて仕事に変えて他に何の変化も残さないことは不可能である(ケルビンの原理)。熱が関わる巨視的な自然の過程はすべて不可逆です。

自由実験

すべての操作が使えます:ピストンは自由に動かす、ハンドルで押し引きする、ロックする、から選べます。ホットプレート、恒温水槽、断熱ジャケットも、単原子気体と二原子気体も選べます。

サイクルを設計してみましょう:定積で加熱し、定圧で膨張させ、定積で冷やし、最後に定圧で圧縮します。p–V グラフで囲まれた面積と、右の画面に積算された仕事を見てください。

単原子気体と二原子気体を比べてみましょう。同じ断熱圧縮で温度が大きく上がるのはどちらでしょう? それはなぜでしょう?

ほかの実験

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